マイコプラズマ
マイコプラズマとは
お子さんの「咳が長引いている」「熱が下がったのに咳だけ続いている」といった症状でお困りではありませんか?
それはマイコプラズマ肺炎の可能性があります。マイコプラズマは普通の風邪とは異なり、適切な診断と治療が必要な感染症です。

マイコプラズマの基本的な特徴
マイコプラズマとは、「マイコプラズマ・ニューモニエ」という細菌による呼吸器感染症で、特に小児に多く見られる病気です。
この病気は一般的な風邪と似た症状で始まりますが、マイコプラズマ特有の長引く咳が最大の特徴となります。
マイコプラズマは細胞壁を持たない特殊な細菌であり、そのため通常の抗生物質では治療効果が期待できません。
この特性がマイコプラズマ治療を複雑にし、専門的な知識が必要な理由でもあります。
◆発症年齢と流行の特徴
マイコプラズマ肺炎の発症は3~7歳の幼児期が最も多く、全体の約70%を占めています。
また、5~14歳の学童期においても高い発症率を示し、この年齢層では症状も比較的重くなる傾向があります。
マイコプラズマは1年を通して発生しますが、特に夏から秋にかけて流行のピークを迎えます。また、3~5年ごとに大きな流行が起こることが知られており、学校や保育園などでの集団感染も頻繁に報告されています。
マイコプラズマの原因
◆感染経路と感染メカニズム
マイコプラズマの主な感染経路は飛沫感染です。
感染者の咳やくしゃみによって放出された飛沫を吸い込むことで感染が成立します。マイコプラズマは感染力が非常に強く、家族内感染率は約80%と極めて高い数値を示しています。
特に注意すべき点は、マイコプラズマの潜伏期間が2~3週間と長いことです。この長い潜伏期間により、感染者が症状を自覚する前に周囲への感染を拡大させてしまうケースが多く見られます。

◎感染リスクが高い環境
マイコプラズマ感染のリスクが特に高いのは、以下のような環境です
- 学校や保育園などの集団生活の場
- 家庭内での密接な接触
- 換気の悪い室内空間
- 免疫力が低下している状態
◎放置した場合のリスク
マイコプラズマを適切に治療せずに放置した場合、以下のような深刻な合併症のリスクが高まります。
- 重篤な肺炎への進行(約30%の症例で見られる)
- 気管支炎の慢性化
- 中耳炎の併発
- まれに脳炎や心筋炎などの重篤な合併症
特に喘息や心疾患、ダウン症候群などの基礎疾患があるお子さんでは、マイコプラズマ肺炎が重症化しやすいため、早期の専門的治療が不可欠です。
マイコプラズマの症状
◆初期症状の特徴
マイコプラズマ感染の初期症状は、一般的な風邪と非常に似ているため、保護者の方が見分けることは困難です。しかし、マイコプラズマ特有の症状パターンを知ることで、早期発見が可能になります。
最も特徴的な症状は、2~3週間以上続く頑固な咳です。この咳は夜間や明け方に特に激しくなり、お子さんの睡眠を妨げることが多く見られます。
初期は痰を伴わない乾性咳嗽が主体ですが、病気の進行とともに痰がらみの湿性咳嗽に変化します。
◆主な症状の特徴
◎発熱症状
マイコプラズマ感染では、38~39℃の高熱が出ることが一般的です。ただし、熱は比較的早期に下がることが多く、解熱後も咳が長期間続くことがマイコプラズマの大きな特徴です。
◎呼吸器症状
咳以外にも、のどの痛みや胸の痛み、呼吸困難感が現れることがあります。特に年少児では喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼーという音)を伴うことが多く、4歳をピークとして高い頻度で見られます。
◎全身症状
頭痛、倦怠感、食欲不振といった全身症状も一般的です。また、約25%の患者さんで腹痛、吐き気、嘔吐などの消化器症状が見られ、時に発疹が出現することもあります。

◆年齢による症状の違い
乳幼児期(0~2歳)では、マイコプラズマに感染しても症状が軽微で済むことが多く、不顕性感染(症状の出ない感染)の頻度が高いとされています。
一方、学童期(5~14歳)では典型的な症状が現れやすく、長期間の咳や高熱により学校生活に大きな支障をきたすことが多く見られます。
◎重症化のサイン
以下の症状が見られた場合は、マイコプラズマ肺炎の重症化が疑われるため、すぐに医療機関を受診することが重要です。
- 呼吸が浅く早い
- 唇や爪が紫色になる(チアノーゼ)
- 意識がもうろうとしている
- 水分が摂取できない
- 高熱が5日以上続く
マイコプラズマの感染予防ポイント
マイコプラズマの感染予防において最も重要なのは、飛沫感染を防ぐことです。
以下の基本的な感染対策を徹底することで、感染リスクを大幅に軽減できます。
◎手洗い・うがいの徹底
石けんを使った丁寧な手洗いを1日に複数回行い、外出先から帰宅時には必ずうがいを実施します。手洗いは最低30秒間行い、指の間や爪の周りまで丁寧に洗浄することが重要です。
◎マスクの適切な着用
感染者との接触時や人混みでは、適切にマスクを着用します。特に咳をしているお子さんには必ずマスクを着用させ、周囲への飛沫拡散を防ぎましょう。
◎環境的な予防対策
定期的な換気により室内の空気を新鮮に保ち、湿度は50~60%を維持します。乾燥した環境では飛沫が遠くまで飛散しやすくなるため、加湿器の使用も効果的です。
◎共用物品の管理
タオル、コップ、歯ブラシなどの共用を避け、感染者が使用した物品は適切に消毒します。特に家族内感染を防ぐため、感染者専用のタオルやコップを用意することが推奨されます。
◎免疫力向上のための生活習慣
規則正しい生活リズムを保ち、十分な睡眠と栄養バランスの取れた食事を心がけます。適度な運動により免疫力を向上させることも、マイコプラズマ感染の予防に効果的です。

マイコプラズマの治療
マイコプラズマの治療は抗生剤を処方し経過観察を行います。稀に抗生剤への耐性がある場合があるため、処方された抗生剤で症状が改善しない時は再度受診が必要です。
◆治療後の経過観察
マイコプラズマの治療では、抗生剤開始後も咳が完全に消失するまで2~4週間程度かかることが一般的です。
当院では治療開始後も定期的な経過観察を行い、症状の改善度や副作用の有無を注意深く監視します。
治療後の注意点として、完全回復まで無理な運動は避け、十分な休息と水分摂取を心がけていただきます。
また、登園・登校は発熱や激しい咳が治まり、全身状態が良好になってから許可しています。
お子さんの長引く咳や発熱でお困りの際は、マイコプラズマの可能性を考慮した専門的な診断・治療が重要です。当院では豊富な経験に基づく適切なマイコプラズマの治療を提供しています。気になる症状がございましたら、お気軽にご相談ください。