はなの病気 よくある症状・疾患NOSE DISEASE
よくある症状
◆鼻詰まり
かぜなどによる急性の炎症、アレルギーや副鼻腔炎など慢性的な炎症で、鼻詰まりの症状が起こります。他に鼻茸という良性のポリープによって鼻詰まりが起きていることもあります。
片方だけ慢性的な鼻詰まりがあるというケースでは、鼻中隔彎曲症が疑われます。鼻中隔彎曲症は左右の鼻の穴を隔てている鼻中隔が大きく彎曲して起こっていますが、かなり重度の彎曲があっても見た目ではわからないことがほとんどです。
また、子どもはアデノイドが鼻腔を塞いていて鼻詰まりを起こしている可能性もあります。
鼻詰まりはとても日常的な症状ですが、慢性化するとQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を大きく低下させます。息苦しさは脳を含む全身の酸素不足につながって集中力低下や疲れやすさを生じさせます。匂いがわからなくなると食欲不振や安全へのリスクに、いびきは睡眠不足に、口呼吸からインフルエンザやかぜ、中耳炎への感染リスク上昇につながってしまいます。
耳鼻咽喉科では、鼻腔通気度検査で鼻詰まりの程度を調べることができます。鼻水が多い場合には吸引や洗浄の処置を行い、鼻腔をきれいにします。粘膜が腫れている場合には、処置に加えてネブライザーで鼻腔のすみずみまで薬剤を行き渡らせて効果的に炎症を鎮めます。さらに原因に合わせた適切な薬の処方を行います。
◆鼻水
水のようにサラっとした鼻水が出る場合、発熱がともなえばかぜ、くしゃみが出るようならアレルギー性鼻炎が疑われます。粘度が高く黄色っぽい鼻水がある場合は副鼻腔炎(蓄膿症)の可能性があります。副鼻腔炎はQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を大きく下げるため、早期の治療が重要です。
子どもの場合、鼻に異物を入れてしまって鼻詰まりを起こしている可能性もあります。異物の形状や素材によって、無理に取ると深い傷を作ってしまう可能性があります。また奥に押し込んでしまうことも起こりやすいので、異物を入れてしまった可能性がある場合には触れずにすぐ受診してください。
◆くしゃみ
くしゃみは、鼻に入った異物を効果的に外に出すための反射です。体に有害なものを取り込まないようにする防御反応のひとつであり、生命を維持するために不可欠な呼吸を正常に保つためにも必要です。かぜやアレルギー性鼻炎、花粉症などで起こるくしゃみもこうした防御反応として起こっています。アレルギー性鼻炎や花粉症によるくしゃみはQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を低下させますので、適切な治療を受けて改善させましょう。
◆匂いがわからない(嗅覚障害)
嗅覚障害は、かぜや副鼻腔炎、鼻中隔彎曲症などによって起こります。こうした疾患によって匂いを感じる部分にダメージを受けたり、その部分に匂い分子が到達できないことで嗅覚障害を生じさせます。原因となっている疾患の適切な治療を受けることで回復につなげます。
◆鼻血
鼻腔内の粘膜には毛細血管が縦横に走っているため、少し傷付くだけで出血しやすい傾向があります。特に高血圧や糖尿病があると血管がもろくなって鼻血も起こりやすくなり、外傷などの原因がなく鼻血が出ることもあります。特に問題ない場合もありますが、粘膜の腫れをともなっていたり、腫瘍などによる出血の可能性もあります。鼻血を繰り返す場合には、耳鼻咽喉科を受診して粘膜の状態を確認してもらいましょう。
◆鼻が臭う
鼻や鼻水から嫌な臭いがする場合、副鼻腔炎(蓄膿症)が疑われます。慢性化しやすいため、こうした症状に気付いたら耳鼻咽喉科を受診して専門的な治療をしっかり受けましょう。
鼻周辺の皮膚の下には複雑な形の副鼻腔が広がっていて、その粘膜が細菌やウイルスに感染して炎症を起こしています。放置していると慢性化していつも鼻が詰まっている状態になり、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を大きく低下させます。副鼻腔は上の歯の根元にとても近いため、虫歯の炎症が広がって副鼻腔炎を発症することもあります。
なお、当院では慢性化して保存的療法では十分な効果が見込めない副鼻腔炎に、日帰り手術による治療を行っています。
◆後鼻漏(こうびろう・鼻水が喉に流れる)
鼻水が鼻の穴から出るのではなく、内側を伝って喉の方に流れてしまう状態です。アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎が原因となることがあります。病気ではなく、加齢に伴う生理的な変化のこともあります。症状が持続する場合は、病的な原因がないか耳鼻咽喉科を受診して精査しましょう。
鼻の疾患
◆蓄膿症・慢性副鼻腔炎
副鼻腔炎は、額から頬という広範囲に広がった複数の空洞で、それぞれが細い部分でつながっています。副鼻腔炎は副鼻腔の粘膜がウイルスや細菌、真菌(カビ)などの病原体に感染して炎症を起こしています。副鼻腔自体が感染を起こすこともありますが、鼻腔から感染が広がってくるケースや、隣接した歯の虫歯から感染するケースもあります。
粘膜が腫れてしまうと中にたまった分泌物の排出が滞ってたまり、鼻詰まりによる不快感、痛み、臭い、後鼻漏、頭痛、額や頬のあたりの痛みや違和感などの症状を起こします。
急性の場合でも完全に治すためには2週間程度かかることがあります。途中で治療を止めてしまうと慢性副鼻腔炎(蓄膿症)となり、保存的療法では改善できず手術が必要になることもあります。
主な症状
- 顔(額から鼻、頬にかけての内側)の違和感
- 鼻水が緑色
- 匂いがわからない
- 鼻の中に悪臭がある
- 頭痛、目の奥が痛い
- 鼻にポリープがある
治療法
副鼻腔は、額・目の周囲、頬などに広がる8つの空洞で、鼻腔につながっており、粘膜に覆われています。鼻から入ってきた外気を加温、加湿、除菌して気管や肺へのダメージを防ぐ役割を担っています。炎症を起こして副鼻腔の鼻水が排出されなくなったり、粘膜が腫れると不快な症状が起こるだけでなく、こうした重要な役割を果たせなくなってしまいます。
細菌感染が原因で起こっている場合には抗菌剤を処方し、吸引や洗浄によって鼻腔内をすみずみまできれいに処置します。その上でネブライザー療法を行います。ネブライザーは、超音波を使用して薬剤をとても細かい霧にして鼻腔内のすみずみに行き渡らせる治療法です。複雑な形状をしている副鼻腔の治療に有効であり、炎症のより早い解消に役立ちます。
◆鼻中隔彎曲症
左右の鼻の穴を真ん中で隔てているのが鼻中隔です。骨と軟骨でできていて、程度の差があってもほとんどの方の鼻中隔は歪んでいます。その鼻中隔の歪みが大きくて呼吸の際に空気がスムーズに流れない状態になっているのが鼻中隔彎曲症です。外から見ても曲がっているようには見えない場合でも、大きく彎曲しているケースがあります。歪み方によっては、片方だけの鼻が詰まるという症状を起こすこともあります。鼻詰まりが起きやすい、スムーズな鼻呼吸ができないといった場合には治療がおすすめできますが、症状がない場合には特に治療する必要はありません。
主な症状
- 鼻詰まり
- 匂いがわからない
- 頭痛
- 肩こり
- 注意散漫
- 鼻血
治療法
炎症や粘膜の腫れがあると強い鼻詰まりを起こしやすいので、それを鎮めるために抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、ステロイド点鼻薬、抗炎症薬、抗生物質などを使います。粘膜を収縮させる血管収縮剤の点鼻薬は最初高い効果を得られますが、一定期間以上使用すると慢性肥厚性鼻炎を起こして逆に悪化させてしまいますので、短期間に限定した使用にとどめるなど、慎重な処方が必要です。 鼻中隔彎曲症に鼻炎を合併していて強い鼻詰まりがある場合には、鼻吸引や鼻洗浄の処置を行って鼻腔内をきれいにして、ネブライザー療法で細かい霧状の薬剤をすみずみまで届ける治療を行います。なお、彎曲が強くてこうした保存療法では改善しない場合には手術による根本的な治療をおすすめしています。
◆アレルギー性鼻炎・花粉症
アレルギー性鼻炎とは、有害なものが体に入ってこないようにする免疫反応が過剰に働いてしまい、本来は無害なものにも反応して症状が現れます。
花粉症はアレルゲンである植物の花粉が飛散する時期だけ発症する季節性アレルギー性鼻炎で、アレルゲンとなる植物にはスギ、ヒノキの他、ブタクサなど春以外の季節に花粉が飛散する植物によるものもあります。花粉症以外の通年性アレルギー性鼻炎は、ハウスダスト、ダニなどの昆虫、ペットの毛・フケ・唾液などによって起こります。
治療では症状を緩和する治療とともに、アレルゲンにできるだけ触れないように注意して暮らすことも重要です。そのため、アレルゲンのできるだけ早い特定が必要になります。
主な症状
- くしゃみ
- 鼻水
- 鼻詰まり
- 涙が出る
- 喉の違和感
- 頭痛
治療法
治療薬や治療方法の選択肢が多く、症状だけでなくライフスタイルやお悩みの点に合わせた治療が可能です。同じ花粉症でも、アスリートはスムーズに呼吸できることが重要ですし、ドライバーやパイロット、受験生は眠気が起きにくいことを優先させる必要があります。人前に出るお仕事では鼻水やくしゃみを効果的に抑えることを求められます。薬の効き目やその出方には個人差がありますから、再診時には処方を微調整してより適した処方に近づけていきます。治療中に気付いたことやお悩みが出てきましたら、遠慮なくお伝えください。
季節性である花粉症に関しては、飛散する少し前から服薬することでシーズン中の症状を緩和させやすくなります。スギ花粉であれば1月半ばくらいにご来院にただくようおすすめしています。
舌下免疫療法について
舌下免疫療法は、長期間に渡って症状を抑えることを目的に微量のアレルゲンを継続的に服用する治療法です。医師の指導を受け、治療薬を舌下にしばらく置いてから飲み込む治療です。微量ですがアレルギー症状を起こす可能性がありますので初回は院内で服用し、問題がなければそれ以降はご自宅での服用を続けます。現在はスギ花粉とダニに対する舌下免疫療法が可能ですが、スギ花粉の場合は花粉の飛散時期に治療をスタートすることはできません。なお、舌下免疫療法をはじめてからスギ花粉の飛散時期を迎えた場合は服用を継続します。ダニの舌下免疫療法はいつでもスタートできます。