副鼻腔炎(蓄膿症)SINUSITIS

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副鼻腔炎について

副鼻腔は鼻腔からつながっている空洞で、額や目の周辺、頬など鼻周辺の皮膚下に広がっています。粘膜に覆われた副鼻腔の空洞は左右合わせて8ヶ所あり、鼻から入ってきた空気を加温・加湿・除菌して気管支や肺への負担を軽減しています。
かぜなどを起こすウイルスや細菌、カビの1種である真菌などの病原体が副鼻腔に感染して炎症を起こしている状態が副鼻腔炎です。鼻腔の炎症が副鼻腔まで広がって起こることもありますが、副鼻腔に直接感染して炎症を起こすこともあります。
副鼻腔粘膜が炎症によって腫れると分泌物が排出されなくなってたまり、額や頬のあたりの不快感や痛み、頭痛、臭いなどの症状が現れます。急性副鼻腔炎は適切な治療を受ければ1~2週間でほとんどが治ります。完全に治りきる前に治療を中止したり、治療せずに放置したりすると炎症を繰り返して慢性化します。慢性副鼻腔炎は蓄膿症と呼ばれることもあります。慢性化すると鼻からの呼吸がスムーズにできなくなり、深刻な病気のリスクを上昇させ、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を大きく低下させてしまうため、早めに適切な治療を受けて、しっかり治すようにしましょう。

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副鼻腔炎の原因

副鼻腔炎の主な原因は、かぜなどの細菌やウイルス感染です。睡眠不足や疲労などで免疫力が低下しているとカビの1種である真菌感染で発症することもあります。アレルギー性鼻炎も副鼻腔炎リスクが上昇します。また、上の歯の根元は副鼻腔ととても近い場所にあるため、虫歯の炎症が広がって副鼻腔炎を発症することもあります。急性副鼻腔炎の症状が3ヶ月以上続いたものは慢性副鼻腔炎と診断されます。

副鼻腔炎の症状

  • 顔が重い
  • 額・鼻・頬の内側の不快感
  • 鼻水が黄色や緑色がかっている
  • 鼻の中に悪臭がある
  • 匂いがわかりにくくなった
  • 後鼻漏(鼻水が鼻腔から内側を伝って喉の方に流れる)
  • 頭や目の奥に痛みがある
  • 鼻茸(鼻のポリープ)がある

鼻茸(鼻ポリープ)とは

鼻茸は鼻の粘膜にできるポリープで、良性のできものです。鼻茸は副鼻腔炎になるとできやすい傾向があり、腫れによって鼻腔を狭めるため鼻詰まりを悪化させます。鼻茸があると副鼻腔炎が治りにくくなるため、早めに適切な治療を行う必要があり、サイズや位置などによっては切除を検討します。

特殊な副鼻腔炎「好酸球副鼻腔炎」

慢性副鼻腔炎は病態によっていくつかのタイプに分けられます。以前は感染が長引く遷延化から起こる慢性化膿性副鼻腔炎が多かったのですが、最近は好酸球性炎症による副鼻腔炎が増加しています。免疫細胞である白血球の1種の好酸球が過剰に集まってしまって発症するタイプで、この好酸球はアレルギー反応を起こしている時に増加する細胞です。ただし、好酸球性炎症はアレルギーによる炎症とは異なります。好酸球性炎症の副鼻腔炎では、黄色く粘度の高い鼻水が出て、嗅覚障害で匂いがわからなくなる症状が現れることもあります。また鼻茸の多発が起こりやすい傾向もあります。原因や発症のメカニズムに不明な点がまだ多く、血中や局所粘膜の好酸球が増加している場合、好酸球性炎症が疑われます。原因や根治に導く治療法が不明であることから2015年に指定難病とされており、症状が治まっても定期的に受診して適切な治療を続けないと再発しやすいという特徴があります。

子どもの副鼻腔炎

副鼻腔炎は脳をはじめとする全身の酸素不足や口呼吸による感染症リスク上昇などを起こしやすい病気です。子どもの副鼻腔炎は、成長や学習、運動への悪影響が懸念され、かぜやインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。副鼻腔炎は子どもに多い滲出性中耳炎など耳の疾患があると慢性化しやすい傾向があり、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を大きく低下させてしまいます。子どもの副鼻腔炎は10歳以降になると治っていく傾向がありますが、健全な成長や将来も役立つ生活習慣を身に付けるために重要な時期ですから、早めにしっかり治していくことをおすすめします。

子どもの副鼻腔炎

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)の検査

電子ファイバースコープとCT(コンピュータ断層診断装置)による検査

副鼻腔炎は、粘膜の状態を直接観察する電子ファイバースコープによる検査と、断層画像で内部を立体的に観察できるCTによる検査、症状や既往症などについての問診、血液検査、鼻腔通気度検査などの総合的な結果を踏まえて診断します。当院では、高解像度の電子ファイバースコープと被曝量の少ないCTを導入して検査を行っています。

慢性副鼻腔炎の治療

保存療法

抗菌剤を使った治療を行います。鼻吸引や鼻洗浄の処置で鼻腔と副鼻腔内をきれいにして、超音波で薬剤をとても細かい霧状にして吸引するネブライザー療法によって薬剤をすみずみまで届けます。副鼻腔は複雑な構造をしているため、こうした処置や抗生物質・ステロイドを使ったネブライザー療法は炎症の効果的な解消に大きく役立ちます。また、長期間、少量のマクロライド系抗生物質を投与する治療法を用いることもあります。

慢性副鼻腔炎の手術について

保存的療法で十分な効果が得られない場合には、手術療法を検討します。副鼻腔炎の手術には顔面切開によって行うものと、鼻腔に内視鏡を挿入して行うものがあります。現在はほとんどの副鼻腔炎手術が内視鏡によって行われており、日帰りで受けられて回復も顔面切開に比べて早くなります。また、顔に傷が残ることもありません。なお、鼻中隔彎曲症がある場合には鼻腔が狭く、内視鏡を挿入して手術を行うことが困難な場合があります。その際には鼻中隔の歪みを矯正する鼻中隔矯正術と副鼻腔炎内視鏡手術を同時に行うこともあります。鼻中隔矯正術も内視鏡で行う手術であり、両方を行う場合も日帰り手術が可能です。

 

◆内視鏡下副鼻腔手術

内視鏡下副鼻腔手術(ESS)は、鼻腔に内視鏡を挿入して行う鼻内手術です。モニターでリアルタイムに粘膜の状態を確認しながら手術をすることが可能です。薬物療法では十分な効果が得られない場合や鼻茸ができている場合に選択されます。
手術では、炎症によって病的な状態になった粘膜を除去し、副鼻腔の換気や分泌物の排出がスムーズに行えるようにします。顔面切開による手術に比較すると低侵襲で身体への負担が少ないため傷が残らず早い回復が見込めます。また、内視鏡では副鼻腔をあらゆる角度からすみずみまで観察できるため、効果的な治療をより安全に行うことができます。

メドトロニック社 ナビゲーションシステム

当院では手術の安全性と正確性を高めるために、Medtronic社製FUSION ENTナビゲーションシステムを導入しました。これは事前に撮影したCT画像を手術中に手術器具の正確な位置情報を知らせるナビゲーションシステムに重ね合わせて表示するものです。これによって手術器具のリアルタイムな位置情報を正確に知ることができます。
副鼻腔は複雑な形に広がっていて、目・歯や口内・脳とても近い場所です。重要な神経や微妙な表情に影響する筋肉や腱も多く存在し、誤って傷付けてしまうと大出血を起こす可能性がある血管も周囲に走っています。また、頭蓋骨の底である頭蓋底にダメージを与えると脳の髄液が漏れる髄液漏を起こすことも考えられます。当院のナビゲーションシステムはそうした危険を未然に防ぎ、安全に手術を行うための高度医療機器です。当院では、内視鏡を用いて行う副鼻腔の手術(ESS/内視鏡下副鼻腔手術)では、このナビゲーションシステムを必ず用いて精度の高く安全な手術を行っています。